『小城さんは面白いって、知っちゃったから。俺のなかで、特別になった』


…『特別』。

それってつまり、池谷くんのなかであたしが、『幼馴染の友達』から『小城麗奈』って存在に、変わったってことだよね。

…そーいう、ことだよね。


ギュウ、と胸が締め付けられて、痛い。

あんな風に言われたこと、なかったから。

やっぱり、戸惑う。

自信を持て、ってことなんだろうけど。

あたしもいつか、利乃やトモくらいの距離で、池谷くんと話せるのかな。

池谷くんの大切な人になりたい…って思ったのも、嘘ではないけど。

…もう少し、自分の気持ちが身体に追いつくのを、待とう。


家を出て、外の暑さに目を細める。

今日の空は、快晴だ。

もうそろそろ、梅雨が明ける。

夏休みまであと二週間、だっけ。

んーっと伸びをして、駅まで小走りで向かう。