…うちは、母子家庭だ。
小学生の頃、両親は離婚した。
父親がダメな人だったから、お母さんは昔からよく働く人だった。
たぶん今日も、これから夜の仕事へ行くんだろう。
…でも同時に、恋するひとりの女性でもあった。
父親と離婚してからというもの、男の影が絶えない。
よくやるもんだ、と思う。
お母さんは容姿がとても整ったひとだから、うまく行きやすいのかもしれない。
その遺伝子のおかげで、私は今まで可愛い可愛いと言われ続けて生きてこれてるけど。
……会って、と言われたのは、初めてだった。
だから、怖くなってる。
憂鬱に、なってる。
…あの人と、再婚するのかな。
そうしたら、必然的に彼は私の『父親』になる。
…ダメだ、考えられない。
頭が痛くなってくる。
やめたやめた、とため息をついて、私は立ち上がった。
制服を脱いで、部屋着に着替える。
カララ…とベランダの扉を開けて、私は外へ出た。
夜風が、顔に当たる。