…お昼休みに、いつも通り麗奈ちゃんとお弁当を食べようと思って。
そしたら担任に呼び出されて、早退することになった。
なんでも、お母さんが担任に用事があるからと電話を入れたらしい。
なんだと思って電話すると、お母さんは『会ってほしい人がいる』なんて答えるから。
逃げてしまおうかと思ったけど、早退した以上、それもできなかった。
お母さんはきっと、それをわかってこんな面倒なことをしたんだろう。
家にできるだけいたくない私は、土日は大体朝早くから出かけてる。
だから、無理矢理にでも学校を早退させたんだ。
…新しい恋人と、私を会わせるために。
「……一度会ったくらいじゃ、どうやっても他人にしか思えないっつーの…」
目を閉じて、今日喫茶店で会った男性を思い返す。
優しそうな人だった。
無愛想な私を気遣って、打ち解けようと必死になってくれていた。
それでも所詮、他人は他人だった。