「…小城さんは、面白いよ。もう、なんにもない普通の人じゃ、ない」
…まるで、勇気付けるように。
繰り返し言ってくれるその言葉に、また胸が締め付けられる。
「……うん」
あたしがそっと返事をすると、池谷くんはフ、と耳元で笑った。
「小城さんは面白いって、知っちゃったから。俺のなかで、『特別』になった」
目を見開いたあたしの身体を離して、彼は笑う。
穏やかに、優しく。
けど、無邪気に。
最初に感じた、あのつかみ所の無い不思議な雰囲気で、彼は笑った。
…ああ、騒がしい。
あたしのなかの『雨音』が、強く強く響いてる。
動き出したいと焦る、痛いほどの雨が降ってる。
…変わらない雨音には、安心するけど。
もうそれだけじゃ、いられない。
「…あ…っ、あたしのなかでも、『特別』になったよ!池谷くん!」
駅を出ようとする彼の背中に、思い切り叫んだ。
周りにいた人が、驚いたようにこっちを見る。