そんなあたしを見て、池谷くんはやっぱり面白そうに笑った。
その笑顔にキュンとして、慌てて顔をそらす。
「…へぇ〜、天泣…すごいね。ステキな言葉。こういうの、もっと知りたいかも」
「…そういう興味からでも、いいんじゃない?」
「え?」
駅が近くなるにつれて、雨がまた激しくなっていく。
ザー…という音が、あたしと池谷くんの周りを包んだ。
「無理に今、職業を決めなくてもさ。そういう知りたいって気持ちを、学びたいって気持ちに変えてみたら?職業は、大学に入ってからでも遅くないよ」
俺もそれだし、と池谷くんは自らを指差す。
あたしはそれを見て、なにかがストンと胸のなかに落ちた。
…あ、そっか。
焦らなくても、いいのか。
雨が、ザー…と音を立てる。
あたしは池谷くんを見つめて、「…うん」と呟いた。
うん、…うん。
そうだ。
今、ぜんぶを決めなくても、いいんだ。