「…………」
けれど返事がないので、チラリと横を見上げてみる。
彼は前を向いて、「…んー」と言った。
…その目は、やっぱりどこか遠くを見つめていて。
「……海、かな」
そう、池谷くんはポツリと呟くように、答えた。
「……は?」
海?
あたしが眉を寄せてポカンとした顔をしても、彼は「うん」と真剣な目で言う。
「俺、海になりたい」
もしかして頭おかしいのか、このイケメン。
なりたいものが海って、なに。
海のように広い心を持ちたいってか。
そんな真剣な目で言われると、もはや戸惑うことしか出来ないんですけど。
「えっと……あたしは、職業的なものを、訊いたんだけど…」
苦笑いしながらそう言うと、池谷くんは「ああ、そっちね!」とやけに納得したような素振りを見せた。
そっちって、どっち。
どうしよう、確かに不思議な雰囲気を漂わせる人だなぁとは思ってたけど。
結構ホントに、周りの男子とは違う感じの人みたいだ。