「シュウ…それじゃあ、私が今ここでシュウの物語の続きを書いたらどうなるんだろう?」

「それはどうにもならないよ。
だって…ひかりはもう物語の中のひかりなんだから。
ここでいくらどんな事を書いたって、影響はない筈だ。
この世界のどこかには小説を書いてる奴もいるはずだけど、それで何かがどうにかなったって話は聞いた事ないしな。」



シュウはそう言ったけど、そんなのやってみなきゃわからない。
私はその日ひさしぶりに小説を書いた。
っていうのも、ちょっと…いや、かなり気に食わない事があったから。
こっちに戻って来てからのシュウは、服装も自分の好きなものを着てるし、そりゃあもう格好良くて…我が彼氏ながら惚れ惚れしてしまうようなイケメンぶり。
この世界では働かなくても別に困る事はないから、現実にいた時みたいにみすぼらしい格好をすることはない。
そんな格好良いシュウだから仕方ないといえば仕方ないのだけど…私達が出掛ける度に、女の子がシュウに寄って来ては甘えた仕草で声をかけるのが私の悩みの種だった。



「ねぇ、シュウ…今度、ライブに一緒に行こうよぉ~」

「また、飲みに連れてってよ。」



私がぴったりとシュウの隣にいるのに、普通、そんなこと言いますか!?
シュウに腕組んだりする?
そりゃあまぁ確かに彼女達はナイスボディでおしゃれで綺麗な子達ばっかりだけど…
それに、シュウもシュウで、そんなことをされてもたいして怒りもせずに「また今度な!」なんて言うんだから。
私が一緒ならもっとびしっと言うべきでしょう!



『「悪いけど、俺はひかり一筋だから、もう声はかけないでくれ!
さ、ひかり、行こうぜ。」

それはとても冷たい口調だった。



「シュウ…言い過ぎだよ。
彼女達も悪気はないんだし…」

ひかりは申し訳なさそうに女の子達の方を見た。



「俺は本当にひかりにしか興味ないんだからはっきり言った方が良いんだよ。」』



私はそんなワンシーンを書いた。
だけど、次の日……彼女達は昨日とまるで変わらずシュウにべたべたまとわりついた。



チクショー!
やっぱり、シュウの言った通り、私がここで書いてもこの世界は全然影響受けないんだ。

苛々するけど、元はといえば私が設定したことだから、怒りのぶつけどころがない。
シュウはかなりの遊び人で、今までつきあった女性は数知れず…みたいなこと、書いちゃったもんなぁ…
そんなシュウだけど、本気で愛した女性は一人もいなくて、ひかりが初めて本気になった女の子って設定だったんだもん…



(あ~あ、結局,明日からもずっとこんな調子なんだな…)

私は肩を落とし、諦めの溜め息を吐いた。