それと、ある時、シュウが面白い所に行こうかって言ったことがあって…
シュウに着いて行くと、空の上にはなんともどでかいドラゴンがいた。



(な…なんでこんな所にあんなものが…)



襲われたらどうしようと、シュウの後ろに隠れてどきどきしている私とは裏腹に、シュウはとても嬉しそうな顔をしてドラゴンをみつめてた。
よく見ると、ドラゴンの背中には古代のギリシャ兵みたいな格好をした若者が乗っていて、あたりの風景も高い山に囲まれた大自然に変わってて,私はわけがわからず、ただ、おたおたするばかりだった。



シュウがそんな私の様子を見て教えてくれたのだけど…この世界は,私の作り出した世界だけではないということだった。
つまり、他の作者さんが作った世界とも繋がってるってこと。
普段暮らしてるのは自分の世界だけだけど、他にこういう世界があるって知ってると、そこへも自由に行けるらしい。
この世界は時間も空間も関係ないから、距離が近いのか遠いのかはシュウにもよくわからないらしいけど。
そもそも、この世界は作者のイメージの世界ではあるのだけど、ネットや紙の上に書き出されたものだけがこの世界に構築されていくんだって。
そういえば、願い事も頭の中で考えるだけじゃなく紙に書けって言うのは書いた時点でただの想像から現実になるからだって聞いたことがある。
きっとそういうことなんだろうね。



「ねぇ、シュウは、どうしてさっきのドラゴンの世界を知ってたの?」

「だって、俺はひかりの世界であれこれいろんな小説を読んだから。
他の連中はあんまり知らないと思うぜ。
でも、ほら……たとえば、作者同士でコラボしたりすることがあるだろ?
すると、そういう作品のキャラは他の世界のことも知るから、そこに遊びに行けるようになるんだよ。」

「へぇ……」



私も一応知り合いはいたけど、特に親しいってことはなかったし、コラボや書き合いはしたことがなかった。
だから、本当ならシュウはこの世界だけしか知らない筈だったんだな。
でも、あんな世界を知ってるってことは……シュウって、本当はああいうファンタジー小説が好きだったんだろうか?
戦士みたいなことがやってみたかったのかな?

この住人は普段は自由に過ごしてるけど、物語を大きく左右するようなことは、作者が書かない限り出来ないらしい。
つまり、シュウが戦士になりたいなんて思っても無理。
だけど、もしも私がシュウを異世界にでも飛ばして戦士にすれば、それでシュウは戦士になれるってこと。
要するに作者は魔法使い…いや、神様みたいな存在なんだって気付いた。
そう思うと、いいかげんなことは出来ない。
もっと真剣に書くべきだったと私は深く反省した。