彼女はきっと今まで、この能力のことでいやな想いをして来たのだろう。
凡人ならば誰しも羨むであろうこの能力だが、持ってみないとわからないことがいろいろとあったのだと思う。



「……野々村さん…
今までにどういったことがあって、あなたをそんな風に苦しめて来たのか…それは俺にはわかりません。
ですが、今、俺はあなたの力によってものすごく救われている。
それは間違いないことです。
俺は……妹のことを話すことが出来ず、とても苦しい日々を続けて来ました。
両親にも言ってないんです。
だって…そんな話、誰が信じると思いますか?
妹が作り出した小説の主人公が現実に現れたなんて、そんな馬鹿な話…
俺だって最初はしんじられませんでした。
誰にも話さないつもりだったけど、俺一人の胸に隠していたら、俺自身がどうにかなってしまいそうで…それで、二人の外国人の友人にだけ話しました。
彼らは二人共スピリチュアルな世界に傾倒していて、だから、俺のことを馬鹿にしたり笑ったりする事がないという安心感があったのかもしれません。
それから、彼らの伝手を辿って霊能力者等にも妹のことをみてもらったんですが、それでも明確な答えはみつかりませんでした。
なにしろ、俺自身が妹についての詳しい事情を話せない。
それもあったのかもしれません。
ただ、元気でいるという事だけしかわからなかったんです。
それだけでも、確かに支えにはなりましたが…でも、あいつがこんな風に苦しんでいるとは思わなかった。
シュウと二人で、幸せに暮らしているとばかり考えていましたから。」

「ご、ごめんなさい…
私が余計なことを書いてしまって…」

「そんなことはありませんよ。
あいつがどんな状況であれ、俺はあいつの真実を知りたかったんですから。
実は……」

俺は、美幸がいなくなってからの母さんのことや、父さんの病気のことなどを野々村さんに打ち明けていた。
ネイサンやリチャードにもこれほど詳しくは話していない。
プライベートなことで、彼らにあまり心配をかけたくなかったから。
なのに、なぜ、野々村さんにはこれほど話してしまったのかわからないが…なぜだか、俺は詳細に渡って彼女に話してしまっていた。