「ご、ごめんなさい。
おかしなことをお聞きして…
本当にごめんなさい!」

「いえ、野々村さんが謝られることなんてありません。
実は……それを書いたのは俺の妹なんです。」

あまりにも野々村さんが謝るものだから…俺はつい、美幸のことを話してしまった。



「い、妹さん!?」

「ええ……詳しい事情は言えないんですが…実は妹は今行方不明のような状態で…」

「行方不明…
それで、青木さんはこの方のことをずっと心配されてたんですね。」

「そんなことまでわかるんですか!?」

「えっ…え…ええ、まぁ……」

野々村さんは少し照れたようにして俯いた。
彼女の能力は俺が思ってるよりもすごいものかもしれない。



「それで、野々村さん…
いつから書いていただけるでしょうか?」

「私はいつでも…
さっきも言った通り、書きたくてうずうずしてるくらいですから…
あ、そうだ、青木さん、妹さんのお使いになっていたパソコンはありますか?」

「あいつは、携帯で打ちこんでたんですが、携帯で良いですか?」

「はい。それでけっこうです。」

「それじゃあ…帰りに俺の家に寄って下さい。
その時にお渡しします。
それと…申し訳ないんですが、このことは誰にも言わないでほしいんです。
もちろん、マイケル達にも…」

「わかりました。
私、誰にも言いません。」



もしかしたら、野々村さんのおかげで美幸達の状況がわかるかもしれないと思うと、俺は待ちきれない気持ちになった。
今すぐにでも取りかかってほしいと逸る気持ちを懸命に押さえ、食事を済ませた後、俺は野々村さんとタクシーで一緒に家に戻って、美幸の携帯を手渡した。




「これです。
野々村さん、どうかよろしくお願いします。」

「はい。確かに…
お預かりします。」

野々村さんの乗ったタクシーに手を振って、俺は再び家に戻った。



(どうか、何かわかりますように…)