「実は…野々村さんにある作品の続編を書いていただきたいんです。」

俺は、とにかくそうとしか言えなかった。
詳しい事情はやはり話せない。



「続編を?
青木さん。小説も書かれてるんですか?」

「いえ、俺が書いたもんじゃないんです…えっと、なんていうのか…」

妹が書いたということをいうべきか迷ったが…
俺は、とりあえず、スマートフォンで美幸のあの小説のページを開き、その画面を野々村さんの前に差しだした。



「これなんです。」

「失礼します。」



野々村さんは、美幸の書いた小説を一心に読み始めた。
その途端、野々村さんを取り巻く気配が唐突に変わった。
表情もいつものあのどこかおどおどした野々村さんとはまるで別人のように引き締まっている。



「……野々村さん、この小説…なんだかすごくおかしな感じがします。」

「……おかしな?
まぁ、素人が書いたものですから……」

「そういうことではないんです。
なんて言えば良いんでしょう。
説明するのも難しいんですが……現実との繋がりがすごく強いっていうのか…なんだかいつもとはかなり感覚が違うんです。
私、こんな小説は今まで読んだ事がありません。」

彼女の言葉を聞いて、俺は背筋が寒くなる想いだった。
やはり、彼女の能力は本物だ。
これが特別な小説だってことを彼女は感じとった。



「野々村さん、そ、それで、この続編を書くことは可能ですか?」

「……ええ……多分……
……と、いうよりも、すでに、なにかが私の中で動き出しそうなんです。
急きたてられてるような気分です。」

「ほ、本当ですか!?」

「あの…青木さん…
これを書かれた方はどなたなんですか?」

「そ、それは……」

本当のことを言うべきか隠し続けるべきか…
俺は、返す言葉に詰まってしまった。