「もう、そんな真面目くさった顔しないで下さいよ~!
私にはわかるんだからしょうがないじゃないですか~」
「だから、なにがわかるんです!?」
なぜ、そんなにムキになってしまったのかわからない。
でも、なぜだか、野々村さんの言葉がただの酔っ払いの戯言だとは思えなかった。
「なにがって……私は、文章の中に散らばった気持ちの欠片がわかるだけですってば~」
「気持ちの欠片…?」
「そうです。
皆気付かないけど、文章にはその人の気持ちの欠片がたくさん散らばってるんですよ。」
そう言いながら、野々村さんはおかしそうに肩を震わせた。
「野々村さん…お願いです。
もう少し詳しく話して下さい!」
「良いですよ~
青木さんは良い人だから、詳しく詳しく詳し~く話してあげますよ~」
野々村さんは、自分の秘密とも言えるべきことを、いつもとは違ってとても饒舌に澱みなく話し始めた。
その内容は、俺の心を大きく動揺させるものだった。
つまり…野々村さんはある種のサイキックで、その人の文章から作者の潜在意識に入りこむというのか、作者が感じていることや見ているものを同様に感じ取ることが出来、さらには作者のパーソナリティを自分の中に取りこんで、同じような文体で表現出来る…そういう風なことだった。
文体を模倣することは慣れや才能があれば出来そうに思えるが、作者の潜在意識に入りこむというのはそれだけで出来るようなものではない。
俺は、彼女にブログを書いてもらっているから、彼女にそんな特殊能力があるという話は素直に信じられる気がした。
「つまり、私は考えながら書いてるわけじゃないんです。
感じながら書いてる…書かされてるってことですね。
自分の意志とは関係なく書いてるんです。
書き終わってからその文章を読んでも、自分が書いたという意識は全然ないんですよ。」
一気に話したせいか、一呼吸置いた後の野々村さんはずいぶんと落ちついていた。
「そうだったんですか。
だから、あんな風に俺の考えてることを的確に書かれてたんですね。」
「……青木さん、私の言ったことを信じて下さるんですか?」
驚いた表情を向けた彼女は、いつもの野々村さんに戻っていた。
「ええ、あなたはそんな嘘を言われる方ではありませんから。」
「ほ、本当に…?
で、でも、どうしてなんですか?
知り合って間もないですし…私のことなんて、まだほとんどご存知ないでしょう?」
「長くつきあってなくてもわかることはありますよ。
それこそ、データではなく感じるんです。
あなたは嘘を吐かれる方ではないし、信じられる方だと。」
「……青木さん…」
野々村さんの瞳から、一粒の涙が静かに零れ落ちた。
私にはわかるんだからしょうがないじゃないですか~」
「だから、なにがわかるんです!?」
なぜ、そんなにムキになってしまったのかわからない。
でも、なぜだか、野々村さんの言葉がただの酔っ払いの戯言だとは思えなかった。
「なにがって……私は、文章の中に散らばった気持ちの欠片がわかるだけですってば~」
「気持ちの欠片…?」
「そうです。
皆気付かないけど、文章にはその人の気持ちの欠片がたくさん散らばってるんですよ。」
そう言いながら、野々村さんはおかしそうに肩を震わせた。
「野々村さん…お願いです。
もう少し詳しく話して下さい!」
「良いですよ~
青木さんは良い人だから、詳しく詳しく詳し~く話してあげますよ~」
野々村さんは、自分の秘密とも言えるべきことを、いつもとは違ってとても饒舌に澱みなく話し始めた。
その内容は、俺の心を大きく動揺させるものだった。
つまり…野々村さんはある種のサイキックで、その人の文章から作者の潜在意識に入りこむというのか、作者が感じていることや見ているものを同様に感じ取ることが出来、さらには作者のパーソナリティを自分の中に取りこんで、同じような文体で表現出来る…そういう風なことだった。
文体を模倣することは慣れや才能があれば出来そうに思えるが、作者の潜在意識に入りこむというのはそれだけで出来るようなものではない。
俺は、彼女にブログを書いてもらっているから、彼女にそんな特殊能力があるという話は素直に信じられる気がした。
「つまり、私は考えながら書いてるわけじゃないんです。
感じながら書いてる…書かされてるってことですね。
自分の意志とは関係なく書いてるんです。
書き終わってからその文章を読んでも、自分が書いたという意識は全然ないんですよ。」
一気に話したせいか、一呼吸置いた後の野々村さんはずいぶんと落ちついていた。
「そうだったんですか。
だから、あんな風に俺の考えてることを的確に書かれてたんですね。」
「……青木さん、私の言ったことを信じて下さるんですか?」
驚いた表情を向けた彼女は、いつもの野々村さんに戻っていた。
「ええ、あなたはそんな嘘を言われる方ではありませんから。」
「ほ、本当に…?
で、でも、どうしてなんですか?
知り合って間もないですし…私のことなんて、まだほとんどご存知ないでしょう?」
「長くつきあってなくてもわかることはありますよ。
それこそ、データではなく感じるんです。
あなたは嘘を吐かれる方ではないし、信じられる方だと。」
「……青木さん…」
野々村さんの瞳から、一粒の涙が静かに零れ落ちた。