「あ！やった！
無事に移動出来たみたいだぜ！」

「あ……本当だ……」



シュウの言った通り、あたりの風景はさっきまでいた森の中から、私やシュウの住むのと似た近代的な世界に一変してた。
でも、おかしい…
ここはちっとも寂れた様子は感じられない。
早速、町の人にも遭遇したけど、その人も少しも弱った様子はない。



「あ、あの…すみません。
このあたりに…えっと…」

不思議には思ったけど、とにかくここあちゃんの家を見つけるのが先決だと思い、私は向こう側から歩いて来た若い女性に声をかけた。
でも、ここあちゃんやハヤト君の苗字がどうしても思い出せない。



「あの…ここあちゃんとハヤト君っていう…」

「あぁ、それならこの角を曲がった所よ。
ココアズカフェのここあちゃん達のことでしょ？」

「え…？」

言われて私は思い出した。
そうそう…確か、最後に二人はお店をオープンする所で終わってたんだ！
喫茶店を持つのがハヤト君の子供の頃からの夢で、やっとその夢が叶って、その店の名前がココアズカフェ。
ここあちゃんはそのことに感激して、ラストは二人のラブラブなチューで終わってたはずだ！
久し振りに思い出した感動的なそのシーンに私の胸は高鳴った。



「ひかり、おかしいじゃないか。
ここ、なんともないぞ。」

「そうだね…なんでだろ…」

女性に教えてもらった通り、角を曲がるとすぐに茶色い喫茶店らしき建物が目に入った。



「あーーー！
あれだよ！
……そうそう！ココアズカフェだから、ハヤト君が外壁をココアの茶色にしたんだよ！」

思い出された小説通りになっていることに私はますます興奮した。




ドアのガラスからそっと中をのぞくと、エプロンをつけたここあちゃんがかいがいしく接客し、カウンターの中ではハヤト君がコーヒーを点てていた。
本物のここあちゃんとハヤト君が目の前にいる…！
私は、まるで、芸能人を見たような気分になって、すっかり舞い上がっていた。