「まだ話してなかったかのう。
良いか…小説のキャラクターというものは、作者が動かすものだが動かすにはやはりパワーが必要じゃ。
考えるだけではなく、そこに作者の思い入れや愛情…魂のようなもんじゃな。
そういうものが不可欠なんじゃ。
ほれ、物を作る場合にもよく「魂をこめて」なんて言うじゃろ?
作られるものにはすべて、多かれ少なかれ作者の魂がこもっているもんなんじゃ。
じゃから、毎日のように更新されている物語の登場人物はその魂をたくさん注がれておるからパワーに満ち溢れておる。
しかし、途中で放り出された物語の主人公には作者の魂が届かんからどんどん弱っていくということなんじゃ。
しかし、そういう物語でも誰かが読み、その誰かの心が動けばその想いの力がキャラクターに注がれる。
けれど、あんたはこっちに来てしもうたからあんたが魂を注ぐ事は出来ないし、その上、ほとんど誰の目にも触れないような所に公開した。
じゃから、わしらはどんどん弱っていくだろうと思っていたのに、なぜこんなに元気でいられるのか、それがとても不思議なんじゃ。」

知らなかった…
そんなこと、知ってたら恥ずかしくても鍵なんてかけずに公開して来たのに…



「……和彦さんだ。」

「えっ!?」



シュウの呟き声を聞いて、私はその意味を理解した。
そうか…兄さんが…
きっと、兄さんが毎日のように私のあのへぼ小説を読んでくれてるんだ…
兄さんは,私がこっちの世界に来てることを知ってるから…
だから、あの小説を読んで私達のことを思い出して,そして心配してくれてるんだ、きっと…
そう思うと、とても苦しくて切なくて…
そして、こんな勝手なことをした私のことを考えていてくれることがありがたくて…泣きそうになってしまった。
それに…
私より先にそのことに気付いたシュウのことが…妹としては少しふがいないような気もしたけど、それでもやっぱり嬉しかった。