「ご両親は野々村さんのその能力について、どんな風におっしゃってたんですか?」

「……父は、そのことは知らないまま亡くなりました。」

「えっ!なぜです?」



本当は自分の話なんてしたくなかった。
話せば、なんだか惨めになるから。
だけど、青木さんはご自分のことを話してくれた。
だから、私も話さないといけないような…そんな気分になっていた。



「私の父はとても真面目で厳しい人でした。
両親の間にはなかなか子供が出来ず、結婚して十五年後…両親も子供のことなんてすっかり諦めていた時に私が産まれたんです。
父はずっと男の子をほしがっていたそうですが、残念ながら私は女でした。
しかも、私の顔は美人の母には似てなかった。
せめて、顔だけでも母に似ていたら、もう少しは…
そんなわけで、期待が大きかった分、父の落胆は大きかったみたいです。」

私は、惨めで哀しい心の中を悟られないよう、そう言って笑って見せた。



「……すみません。
立ち入ったことをお訊きして…」

まだ話の途中だったのに、青木さんはとてもすまなさそうな顔をして私に頭を下げた。



「いえ!
そんな顔なさらないで下さい。
悪いのは私なんですから…」

「何をおっしゃってるんです。
あなたは何も悪くない。
お父様もきっと心の底ではあなたが産まれたことを喜んでおられたと…」

「そんなことありません!」



感情が高ぶり、私はまたしても大きな声を上げていた。
そのせいで、青木さんは驚いたような顔で私をみつめていた。



「ごめんなさい…
……でも…本当に…父は私に失望してたんです…」

そう言った途端、いやな記憶があれこれと思い出され、ますます感情が高ぶるのを感じて私は唇を噛み締めた。
青木さんは何を言ったら良いのか困っているようだったので、私は青木さんをそれ以上困らせたくなくて言葉を続けた。