「待たせたな…」

私があれこれ回想していると、おじいさんが良い香りのするお茶をワゴンに載せて持って来てくれた。
何のお茶なのかはわからないけど、おじいさんのいれてくれるお茶はとっても美味しくて…
それと一緒に出してくれる果物の入ったクッキーもとても美味しい。
私とシュウはこのお茶とお菓子を目当てにここに通ってると言っても過言ではない。
あ、もちろん、話を聞くことが一番なんだけど…



「おじいさん…それで、この前の話なんだけど…」

「門の話か?
あのことでまだなにかあるのか?」



門っていうのは、私がここに来るために書いた異世界に続く門のこと。
シュウと私はあの門をくぐって、ここに来た。



(あれから、どのくらい経ったんだろう…?)



あの日、私はあの小説を書き上げるとすぐにシュウの部屋へ向かった…







隣の部屋の兄さんには,絶対に私の計画を知られたくなかったから、私はドアを閉める音にも気を遣い、足音を忍ばせてシュウの部屋に向かった。



「ひかり、来てくれ。
なにかおかしいんだ。」

シュウには今から部屋に行くとメールしといたから、すぐに開けてくれて…
その言葉を聞いた時、私は自分の計画が成功したことを確信して、身体が震えたのをよく覚えてる。



そこにあったのは白くぼんやりと光る四角い物…
門だ…
私の書いた通り、門がそこに現れていた。



「シュウ…行くよ。」

その時の私には何の迷いも怖れもなかった。
シュウと私にとってこうすることが最善の策だと信じきっていたから。



「行くって…どこへ?
ひかり、これを見て何も思わないのか?」

「大丈夫!
シュウ…私を信じて…!」

「信じるって何を…あ…!」

私はベッドの上に携帯を放り投げると、シュウの手を掴み、門の中に飛びこんだ。