彼女はそういうと、くらりと椎の腕の中へ。
色白い彼女の顔は、少しだけ青ざめていた。
椎はなにかを夢夏に囁くと、夢夏はこくんと頷き、椎に抱っこされていた。
「ったくよ……嫌な女だぜ」
俺の頬には、涙が流れていた。
こんなにも。
魅力的な女を初めて見た。
「賭け、なんて…不要だったかな」
「いや、賭けのお陰だよ。奏」
椎の腕の中のお姫様を見つめる。
小さな体で、俺を信用したから離さないと言ったこいつ。
どこまで強ぇんだよ、馬鹿。
「俺も離してやんねぇ」
俺がそういうと、みんなが微笑んだ。
「護るぞ、絶対」
椎の声は、聞いたことの無いくらい強かった。