秋も、夜になれば昼間に比べて気温がぐんと下がる。そんな気温でも、人肌が深空を暖めてくれた。

 今宵もまた、静かな夜―

 まるで身を清めるかのように、彼女は雄二を受け入れていた。

 ふと頭の中に、スクラップのように浮かんでは消え、浮かんでは消える、伸夫の報復。

(…消せば、済むこと)

 目を閉じて…
 この人の吐息を感じて…

 そんな受け身の深空を、目を細くして雄二は見つめる。さっきは帽子とストールでよく見えなかった深空の顔。

 彼女の希望で部屋をベッドサイドのランプの光だけで燈していたが、やはりよく見ると、顔中、痣だらけだ。

「……」

 彼は、深空の顔中にできている痣にそっとキスをした。

「!」

 深空はびっくりして目を開けると、雄二と目が合った。彼は深空の頬に手を添えて、吐息を残して唇を寄せた。