「楽しかったね!」

 映画館のエントランスに続くエスカレータの上で、さっきとは打って変わって深空の声が高らかに響いていた。

「うん。なかなか良かったわー」

 雄二も、満足そうな顔をしてうなずいた。

「車で空跳んで、乗り遅れた汽車を追い掛けるところ、なんかウケたし」

 しっかり買ったパンフレットを片手に深空は興奮気味だった。

「来年公開されるヤツで完結か。また見に行かなくちゃなー」

 嬉しそうにそう口にする雄二を見て、深空は彼の右腕に飛びついた。

「誘ってくれて、ありがと」

 深空は満面の笑みで彼の腕に自分の腕を絡ませていた。少し元気になった彼女を見て、雄二も安心したように笑った。

「なぁ、これからどうする? ウチに来る?」

 エスカレータから降り、映画館から外に出る。眠らない街を駅のタクシー乗り場目掛けて歩き出した時に、雄二は深空に尋ねた。すると、深空は素直にうなずく。

「んじゃ、行こ」

 彼は深空の腰に腕を回し、彼女をエスコートする。興奮覚めやらぬふたりは、彼の部屋へと向かった。