いつものように雄二の手を握る深空だった。そんな彼女の前に現れたのは、どことなく彼に似た男性だった。

「君が深空さん?」

「え、あ、はい…」

 目の前の背の高い男性を見て、深空はまじまじとその男性の顔を見つめた。そしてすぐにパッと明かりが付いたような顔をしてみせた。

「あ… ひょっとして… お兄さんですか」

「初めまして。兄の敬吾です」

 雄二よりも身長が10センチは高い敬吾は、優しく微笑みながら深空に会釈する。深空も立ち上がり、頭を下げた。

「雄二の世話をしてくれてありがとう」

 病室の前の廊下で、深空は敬吾と話をしていた。

「いえ…」

 深空は首を振った。

「彼はあたしと娘を助けてくれました。彼がいなかったらあたしは…」

 深空の目には自然と涙が溜まっていく。

「あいつはね、昔から変に責任感が強いというか…」

 敬吾は、フッと笑った。

(似てる… 兄弟だから、当たり前か…)

「バカ正直なところは、相変わらずでね」

 笑いながら話す敬吾を見て、深空はドキドキしていた。

「君に、お願いがあるんだ」

「え?」

「あいつの意識が戻ったら、一番最初に君が映るように、ずっと側にいてやってほしい」

 敬吾は優しい目をしていた。