「…なるほど。では、寺の裏手の林から発見された女性が、あなたの前から柵を乗り越えて飛び降りたわけですか…」

 彼女の話を聞いた浜中は、ポツリとつぶやいた。深空は、黙ってうなずく。

「…取り合えず話はわかりました。また話をうかがいにいくかと思いますが、
その時はよろしく」

 刑事は頭を掻きながら病室から出ていった。

 深空はふーっと溜息をついた。

(…少し、疲れたな)

 枕に自分の頭を沈ませ、彼女は天井を仰いでいた。こんなに心細いと感じたことがなかった。昔の自分ならば、ひとりっきりで部屋の中にいても、寂しいと思ったことなどなかったのに…

 もう一度、深空の口から切なく溜息が漏れた時、ナースコールが鳴り出した。

「はい?」

 ボタンを押して、応答する。その時に聞いた看護師の言葉がにわかに信じられなくて、深空は固まっていた。

『沢崎さん、聞いてますか? 深雪ちゃんが意識戻りましたよ!』

 その知らせを聞いた途端、深空の目には眩しいほどの光りが差した。病室の場所を聞き、深空は逸る気持ちを抑えながら、急いで自分の病室を後にした。