柔らかく微笑んで、そう言った俺に

グレイスの瞳が大きく揺れる

そして、まるで抗うかの様に細められた




「お止め下さい...礼など、言われたくありませぬ」

「え?」

「私はっ――礼を言われたいが為に、アレン様のお側にお仕えてしていたわけではありませぬっ」




首を傾げる俺に詰め寄ってきて、キッと俺を睨みつけるグレイス

微かに濡れるその瞳が、まるで宝石の様に朝日を浴びて光る



礼を言われたいが為じゃない?

どういう事だ?



もう揺らぎのない彼女の瞳を見つめながら

その言葉の意味を探るけど

一向に答えは出ない