「アレン様っ!」




暗闇の中で、そんな声が唐突に伸びてきた


自分の名前だと思って、ゆっくりと顔を上げる

すると雨の中、美しい白の衣をなびかせながら

グレイスが駆け寄ってくるのを見た



その姿を立ち止まって、ただじっと見つめた





「お探し致しました! 御無事で?」

「――あぁ」



心配そうに眉を垂らして、俺の姿を上から下に眺めるグレイスにそう言う

すると、俺の変化に気付いたのかピタリと動きを止めた彼女


雨に濡れている事も厭わずに、俺の顔をじっと見つめている

それでも



「――‥とりあえず中へ。そのままでは、お風邪を召されます」



そう言って、俺の肩をそっと撫でた