「――アレン様」



何も考えずに外の景色を眺めていたら、聞き覚えのある声が背を叩いた

振り返らなくても分かる




「何? グレイス」




だから振り返らずに、目に映る緑を眺めながら

そう声を落とした




「何、などと――」



すると、少し不機嫌そうなグレイスの声が返ってきて

次の瞬間、音も無く彼女の横顔が俺の視界の隅に映る




「姫様と毎夜お会いしていたとは、誠でございますか?」




その言葉にチクリと棘が胸に刺さる

胸の奥の、心に