私の言葉を聞いても、表情一つ変えずに視線を私に戻したホリス
感情が欠落した様なその顔が、この男の時間が止まっている事を明らかにしている
「お風邪を召されます。中へ」
もう一度落ちた言葉に、今度は強さが混じる
どこか冷たさを孕んだ、その瞳が私を見る事はない
「アレンは?」
ホリスの言葉を無視して、新たな会話を生み出す
あの市場での出来事の後、アレンとは会っていない
いや。
きっと会えない様に裏で手を回されている
賑う市場に現れた、ガスパルの残党
逃げ遅れた子供を守る為に、アレンは戦ってくれた
瞳を閉じれば、今も思い出す
あの美しい姿を
まるで風の様に、駆けて行ったその姿
一切無駄のない動きに目を奪われた
辺りに散る血が、真っ赤な花の様に見えた
そして、漆黒の髪の隙間から見えた
あの瞳
黄金に輝く、その瞳に息を飲んだ