「苦しい戦になる。援軍も来ないこの国は孤立している。隙を見せれば、一気に崩れ落ちる」

「――」

「一瞬の隙が、すべてを闇に葬る事になる」




父の言葉が鉛となって俺の心に落ちていく

逃げられない現実を目の当たりにして、息もできなくなる

だけど




「この国を、滅びさせはしない」




ただ、その言葉に必死に繋がって自分というものを保つ

崩れ落ちてしまいそうな、未来を振る切る様に



ぐっと爪が食い込む程強く拳を握った俺を横目に見る父

その向こうに見えるレリーヌの滝が、どこか寂しげに映る




「――私も共に戦う。この地には返しきれない程の恩があるからな」




そう言って、不敵な笑みを浮かべて俺の肩に手を乗せた父

その温かさを感じて、微かに胸の重りが軽くなった