「父さん」



どこか暗い部屋の中に立つ父の背に声をかける

いつもと変わらず美しい世界のはずなのに

目に映る世界は、どこか暗く陰っている




覇気のない俺の声を聞いて、父が振り返って微笑む

どこか悲しそうに




そんな父に歩み寄って、小さく声を落とした




「――どう思う?」



この戦いの行く末を

多勢に無勢の、この戦を




「分からない」

「――」

「敵がどれほどの数かもハッキリしない。この国の軍備も、私は詳しくはない――情報が少なすぎる」



そう言って、美しい海の色をした瞳を伏せた父



確かに

情報が少なすぎて、何をしなければならないのかハッキリしない

この国の事も、すべて把握しているわけではない



手を出しようにも、出せない

下手に手を出せば、それが命取りになるから