◇
「敵は間違いなく、アネモスに向かっております」
静まり返った部屋に、透き通った声が響く
いつもの様に冷静な顔をして、机の上に広げられた地図の上を指でなぞるホリス
「あちらの、兵の数は」
「分からぬ。だが、以前とは比べものにならぬほど多い」
どこまでも冷静なホリスの言葉が、冷えきった部屋を一段と冷たくする
突き付けられた現実が、あまりにも悲劇に似たもので
思わず瞳を強く閉じた
「こちらの兵の数は」
地図を見下ろしながら、小さく呟いたレイア
その言葉を聞いて、誰もが口を噤む
俺達の周りを囲む大臣や、ホリスまでもが――
そんな不穏な空気を感じて、レイアが回りを見渡す
その視線から逃れる様に、皆が下を向いた