「――‥アレン様!」
柔らかく微笑む彼女の髪を撫でようとした時
急に背後から声がかかる
反射的に後ろを振り向くと
パタパタと駆けてくる姿が見えた
「グレイス」
「アレン様!―――っレイア様! 失礼いたしましたっ」
俺の名を呼んだ後、きっと俺の影で見えなかったであろうレイアの姿を見つけて
息を詰まらせて、頭を下げたグレイス
「構わぬ。どうした?」
そんなグレイスの姿を見て、小さく笑ったレイア
すると、おずおずと少し頬を染めたグレイスが顔を上げた
「何かあったのか? グレイス」
「アレン様...いえ、たいした事ではないのですが――またもや、ゲル様の御姿が見えないものだったので...」
「――また?」
「はい...明日の荷造りのお手伝いを申し付かっていたのですが...」