「過去を振り返っては、なりませぬ」




まるで、自分に言い聞かせる様に強くそう言うホリス

すると




「過去を振り返る事は、悪い事ではない」




じっと、2人の姿を見つめていた父が声をかけた

優しく微笑みながら




「ゲル...何を言って」

「囚われる事はよくないが、振り返る事は悪い事ではない」



真っ直ぐ揺らぎなく伸びる父の言葉に、ホリスも口を噤む

それほど、父の言葉には力がある

人を惹き付ける、力が




「過去は、今の自分を作り上げてきたモノだ。楽しかった日々も、悲しかった日々も、すべて」

「――父さん」

「思い出は人を強くする。美しい思い出であればあるほど、それは心の支えになる」




――確かに。

きっとこれから辛い事が起きる度に俺は、レイアの事を思いだすだろう



楽しく、輝いていた日々を



そうすれば、心が温かくなると知っているから

挫けそうな心を支えてくれると、知っているから