「兄様はとても優しい御方で、いつも私の我儘に付き合ってくれた。それでも、父様の様に賢く、母様の様に強い心を持っていた。まさに王に相応しい、御方だった」




レイアの言葉を聞いて、目の前のホリスがギュッと強く手を握ったのを見る

レイアもその姿が目に入ったのか、ホリスを見て悲しそうに微笑んだ




「そんな兄様を支えていたのが、ホリスの兄、エルだ」




その言葉で、ホリスの先程の行動に合点がいく

ホリスの兄――エルもガスパルとの戦の犠牲になったのだと、知って




「2人はとても仲が良くてな、まるで兄弟の様だった」

「――いい騎士、だったんだな」




すると、先程まで黙っていた父が隣に座るホリスの肩にトンと手を置いて、そう言った




「――あぁ。一族の中でも、群を抜いて強かった。私の、目標だった」




どこか現実味のない声が世界に満ちる

発する言葉と、心が一致しない様な

どこか不具合を感じる



でも、それはもしかしてホリスの抵抗なのかもしれない

心の闇に囚われない様に抗う、彼の――