「――‥ありがとう。父さん」



どうにもこうにも、胸が詰まる

父の顔が見れずに、ぐっと奥歯を噛みしめた




「お前の人生だ。何を守るかは、お前が決めろ」



そんな俺を見て、またガシガシと俺の頭を撫でた父

どこか寂しそうな顔をして




「私はヴェントスに戻る。あそこは私の生きる場所だ」

「――あぁ、分かってる」

「どうも、ここの風は優しすぎて合わん」

「父さんには、あの強い風が合ってるよ」



やっと顔を上げて笑う事ができた

そんな俺を見て、父もいつもの様に笑う



――そうだ

巻き上げる様な、あの風が

強く逞しい父には合っている