ふと風が頬を撫でるのを感じて、外に目をやる



燃える様に生い茂る木の葉

惜しげもなく流れる滝

そして、絶え間なく降り注ぐ暖かな光






「この国の風は柔らかいな」



すると、俺と同じ様に外の景色を目に映していた父が目を細めて、そう言う

その姿がまるで、少し前の自分を見ている様だった



この柔らかい風の中で抗っていた、自分を





「俺は、この風が好きだ」



温かく、包み込む様な柔らかな風

激しく荒れ狂うヴェントスの風とは真逆の――



始めは抗っていた

この風に馴染む事を



それでも、今は

この風が愛おしい