辺り一面に咲き誇る花畑

この庭にしか咲かない花




いつもの建物まで歩いて、そっと腰を下ろす


よく家族で楽しく過ごした、この場所

沢山の思い出に溢れた、この場所

でも



笑い声も

優しかった笑顔も

その姿も


――どこにもない



そこにいるのは、私だけ

大好きだった人達は、誰もいない



一人ぼっちだと気づくのは容易い

その瞬間襲い掛かってくる酷い喪失感

気を抜けば、たちまちそれらに飲み込まれそうになる



――歯を食いしばって、ただ誰もいない花畑を目に映す

あの日と変わらない美しい庭



でもその光景が、まるで父様達などいなかったのだ。と言われている気がして

思わず強く瞳を閉じた