「騎士入団の許可証です」
「ホリス...感謝する。アレンも喜ぶだろう」
淡々と話すホリスに柔らかく微笑む
それでも、彼が微笑み返してくれる事はない
「ただ...」
「何だ?」
「1つ気になる事がございます」
下の欄にあった箇所に自分のサインを書き始めた時、ホリスの声が降ってくる
顔を上げると、私を見下ろしていたホリスと目が合った
「―――あの男は本当に...」
そこまで言って、再び口を閉ざしたホリス
そして、まるで何かに迷っているかの様に目を伏せた
「アレンが、どうした?」
「いえ――。まだ確信のない事です。お忘れください」
首を傾げた私を無視して、サインを書き終えた羊皮紙を取り上げたホリス
そして器用にクルクルと巻き上げ、胸元にしまった
「なんだ。言ってみろ」
「いえ。悪戯に姫様の心を乱す事はできませぬ―――では」
そう言って、引き留める私の声も聞かず
ホリスは部屋を出て行った