不意に気持ちのいい風が頬を撫でて目を閉じる

その柔らかさに、思わず溜息が漏れた



穏やかな時間が俺を絡め取る

過ぎていく時間すらも、感じた事がないほどゆっくりに感じる



でも



こういった様に穏やかに過ごす時間は

正直俺には合っていない



本当は、もっと何も考える間もない程に

我武者羅に走り回っていたい

沢山の人に囲まれて、みんなの話す話しを笑いながら聞いていたい――



そっと辺りを見回してみるけれど、人一人いない



ただ風が木の葉を揺らしていく音と

小川のせせらぎだけが絶えず聞こえるだけ



それでも、以前はそれで良かったんだ

彼女が側にいるだけで、俺の心は満たされていた



そんな事を考える暇もないくらい

楽しかった