あの日の事を思い返していると、花を活け終えた彼女が静かに父の元へと歩み寄ってきた

そして、美しく咲き誇る花を父の側に置いてから、俺の姿を捕らえた





「約束の池の事はご存じで?」

「――あぁ、知っている」



俺の言葉に、その瞳を柔らかく細めて

満足そうに微笑んだグレイス




「――この国の男女は、必ず前世から『約束』を交わした相手がいると信じられております」

「約束?」

「はい。私達は皆、伝説の姫様と王子様の様に前世で深い愛を育んで、愛の約束を交わした相手がいると言われています。そして、その約束が固いものであればあるほど、例え生まれ変わっても必ず会える・・・と」



そう言い終えると、少し悲しそうに微笑んだグレイス

しかし、すぐにその瞳を伏せた




「きっと・・・姫様とアレン様は約束の相手ですわ。あんなにも、お互いを愛し合っているのですから」