そうか、わたしは今になってもまだ、本気で朔ちゃんと向き合おうとしていなかったんだ。
『早くしないと、夏休みが暗いまま終わっちゃうよ?それでもいいの?!』
「う…それはやだ」
『でしょ。加野くんと話さない限り、何も解決しないんだから、頑張りな』
「…はい、ありがとうアニカ」
…そうだよね。朔ちゃんと話ができない限り、今のこの暗い重い空気は続いていくのであって。
わたしの色々な気持ちも、飛呂くんの気持ちも、朔ちゃんの気持ちも、すべて動けないままなんだ。
「…よしっ」
アニカとの電話を切って、そのまま朔ちゃんの電話番号を開いた。
…この電話番号ひとつをとっても、色々な思い出が出てきて、泣きそうになる。
「…初めて携帯に入れた電話番号だね、朔ちゃん」
そうだ、お互いに携帯を初めて与えてもらった時、初めて交換した人。それも朔ちゃんで。
…早く、会いたい。
朔ちゃんの顔を見たい。声が聞きたい。話を、聞きたい。
「…っ」
わたしは、何も迷いなく、通話ボタンを押していた。
鳴り響く電話を待つ音。この音を何回聞いて下を向いたことか。
…でも、今日は出るかもしれない、と、かけてみたい気持ちになる。
「…朔ちゃん、出て…」
わたし、朔ちゃんに話したいことがたくさんあるんだよ。
感じたこと、思ったこと、考えたこと、色々朔ちゃんと、お話したいんだよ。
…だから、出て。