それから、わたしは1つずつ言葉を紡ぎながら、朔ちゃんとのことを話した。

夕飯に、朔ちゃんの大好物を届けに行ったこと。
行く前には連絡をしたこと。行ったら朔ちゃんが勉強していたこと。

昨日の飛呂くんとのことを知られてしまったこと。

飛呂くんのこと考えるなら、帰ってと言われたこと。

…そして、キスをされてしまったこと。



飛呂くんは、下を向いたまま、うんうんと聞いていた。

さすがに、キスをされたことに触れたら、目を大きく開いたけど、一度長い瞬きをして、またうんうんと頷いてくれた。


「…そう。じゃあさっきの痕も、その時につけられたってわけ」

「…うん、ぼーっとしてて、あんまり…よく覚えてないけど…たぶんそう」

「…そ」


一通り話し終わると、長い沈黙。

本当に気まずかったけど、飛呂くんはじっと遠くを見つめたままだった。

…きっと、何か考えているんだ。


…このまま、飛呂から別れを切り出されることもあるってことは分かってる。

でも、もうわたしから話ができるのは、これが全てだ。


「……っ」


そよ、と、風がわたしたちを撫でていく。

その風はぬるくて、少しだけ、気持ち悪い。

暑いからなのか、冷や汗なのか、つーと、コメカミの横を伝っていく。


…飛呂くんに、もし、別れを切り出されたらどうしよう。

もう、お前いらないって言われたら…。


今まで、ふられた経験も何度もあるけど、飛呂くんだけは、それが本当に恐ろしかった。

…わたしは、それだけ飛呂くんのことが好きなんだ。


…それなのに…。