「…ごめんなさい…ごめんなさい…ごめんなさい………」


飛呂くんを、自分から裏切ったわけじゃない。

わたしは、昨日だって、ずっと、飛呂くんのことで頭がいっぱいだった。

大好きだよ。それは本当なの。

だけど、それは今、口に出したら、ずるいのは分かってる。


「…きみかは、やっぱり、あいつが好きなの?」


…低い、震える声で、そう言った飛呂くん。


「…………ちがう……」


男の人として、好きなのは、飛呂くんだけ。
それは、嘘じゃない。


「…きみかは、俺のもんでしょ…」

「…っ、ごめんなさい…」

「…っ、くそ、触らせんなよ…!!」


わたしの顔の真横にあった手が、丸い拳を作って、ガンっと、ベッドを叩いた。

その音にびっくりして、ギュッと目を閉じると、その瞬間にピリリと痛みが広がる。


「…っ、う」


さっきまで、飛呂くんの指が触れていたところに、飛呂くん自身が今、触れていて。

朔ちゃんが付けた怒りの印に、飛呂くんがさらに怒りの印を付け足す。


「…飛呂く…っ、」


首筋から広がる熱くなる感覚に、思わず飛呂くんの背中にぎゅっと手を回していた。