…保健室で眠っている時、夢を見た。
朔ちゃんのことばかり考えていたからか、その夢にも朔ちゃんが出てきて。
でも、家に行ったら朔ちゃんはいなくて、わたしがそれを必死に探している夢だった。
小さい頃の、夢。
…朔ちゃんは、朔ちゃんのお母さんが忙しくて、遅く帰ってくる日が続くと、よくおばあちゃんの家まで逃げていた。
そんなに近いわけではない。子どもの足じゃ、かなり遠く感じる距離だと思う。
少しさみしいときは、わたしの家に来るくせに、本当に泣き出しそうなくらいさみしい時は、絶対にわたしにその姿を見せない。
…昔から、そんな子どもだったんだ、朔ちゃんは。
いなくなるたびに、近所では大騒ぎ。
だいたいいつも、わたしが、いなくなったことに1番初めに気づく。
そして、朔ちゃんがいなくなったと大泣き。
わたしが近所迷惑なくらい、わぁわぁと泣くもんだから、近所にも知れ渡ってしまうという惨事。
…でも、いつも朔ちゃんは、おばあちゃん宅で一泊して元気を取り戻すと、次の日にはケロッとした顔で戻ってきていた。
「何泣いてんだよ、きみか」
やさしく笑う、朔ちゃん。
なでなでと、まだ小さかった手で、頭を撫でてくれる朔ちゃん。
「…朔ちゃん、もう、どこにもいかないでよ」
「いかないよ、俺は、きみかを置いてどこにもいかない」
「…ほんとうに?」
「本当だよ。だから帰ってきたんでしょ。心配させて、ごめんね。もう泣き止んでよ」
…そんなことを、もう何回、繰り返したんだろう。
その度に、わたしがいるからと帰ってきてくれる朔ちゃんが大好きになって、わたしはますます、朔ちゃんから離れられなくなっていった。
わたしにとっては、お兄ちゃんみたいな、でも、家族よりも大事な、宝物だったんだ。