「…もう、帰れ…。乱暴なことして悪かった」


今まで聞いたことのない低い声に、ビクッと身体が跳ねる。

「………」


分かってる。

わたしは、今日、朔ちゃんを傷つけた。


朔ちゃんがどうして怒っているのか、どうしてこんなことをしたのか、全てに気づくことはできなかった。

いつも通りだった。わたしにとっては。


でもきっと、朔ちゃんにとってはそれがくるしかった。

それを繰り返してきたから、朔ちゃんは怒った。

それだけは、分かってるよ。


…でも、どうしてスッキリしないのか。

それはきっと、朔ちゃんが、どうしてあんなことをしたかだった。


「…ごめん、君花」


そんな声を出すなら、どうして朔ちゃんはあんなことをしたんだろう。

どうして、ザマーミロと言いながら、あんなに泣きそうな顔をしていたんだろう。


…どうして。


「…っわ、わたしもごめんね、朔ちゃん…っ」



なにも、わからないまま。

でも、なにかが胸にひっかかって、もやもやしたまま、その日はわたしから、朔ちゃんのもとを去った。