それでも、朔ちゃんはしつこく聞いてきた。


「…なんかあった?」って。


その度にわたしの顔は熱くなってくるから、わたしは思わず近くにあったクッションに顔を埋めた。


「なんもないって言ってるでしょー!」


そう言いながらも、また、自分のくちびるに、左手の人差し指を当ててみる。

…もっかい、したいなんて、飛呂くんも、あんなこと言うんだ…とか。

そんなこと、考えてみたり。


目をフッと閉じると、いつの間にか、黒い影が頭上にあることに気づく。


「…朔ちゃん?」


いつの間にか、椅子を下りて、わたしの斜め前に突っ立っている。


どうしたの、と、聞こうとしたけど、朔ちゃんはあっという間にわたしに詰め寄った。


「…あのね、君花」


……距離が、ちょっと近い。


「…楽しいのは分かるよ。けど、俺の前で…そんな反応、しないで」

「…え?」



…そんな反応…?