―――…
飛呂くんと一緒に、家に戻ってきた。
あれから雨はしばらく降り続いていたけど、乾燥機が回り終わる頃には止んで、少しだけ青空も見えていた。
家の前まで送ってくれた飛呂くんにお礼を言って玄関を開けると、一気にいい匂いが広がった。
…今日の夕飯の匂いだろうか。
「あら、君花帰ったの?ちょうどよかった」
「ママ」
んん、この匂いは、煮物かな?
しかも、サトイモ入り。これは、朔ちゃんの好きなやつだ。
「なに?またこれ朔ちゃんのところに持っていくの?」
「そうよ。朔ちゃんの大好物だもの」
当たり前のように答えるママは、両親が共働きで帰るのが遅い加野家に夕飯を作っては持って行っている。
配達はいつもわたしに任されているわけだけれど。