「ん。傘、なんとか開くようになったよ」

「ほんとに!?」


ほれ、と手渡されたそれは、しっかりと、いつも通り力強く開いてくれた。

よかった、もうそろそろ変え時かなって思ってたから。
これでまた雨の日は使える。


「ありがとう、飛呂くん」

「別に」


お礼を言ったのに、ふいっと顔を逸らされてしまった。

んんん…。やっぱり飛呂くんは分からない…。

ものすごく優しさを感じるときもあれば、こうやって冷たい態度をとられるときだってある。
それは、出会った時から分かっていること。

だけど…。


「…飛呂くん、ごめんね」

「…は?なにが」

「だって…。わたしが迷惑かけちゃったから、怒ってるかなって…」

「は?」


初めて、ゆっくりできる時間だったのにな。

わたしがちゃんと、傘開けるか確認しておけばよかったのに。


だけどなんて言ったらいいか分からなくて、色々と言うことを考えていたら、すぐにため息が聞こえた。