飛呂くんの部屋は、黒で統一された部屋だった。

シンプルで、男の子らしい部屋。


お父さんとお母さんは、夕飯時じゃないと帰ってこないということを言われた。
前に話してくれたお姉さんも、今日はお仕事で家にいないらしく。


つまりは、二人きり。


「はー、もう、散々だったな」


カーテンを開けながら、飛呂くんは大きくため息をついた。

わたしの折り畳み傘が壊れていたばっかりに…。

申し訳ないです、本当に。


「ヒヨコ、さっきの傘、もっかい見せろ。直せるか見てやるから」

「え、あ、ありがとう!」


鞄から再び傘を取り出して。
それを飛呂くんに渡す。


飛呂くんの匂いがする服に身を包まれて。
目の前には、ちゃんと飛呂くんがいて。

わたしのために、一生懸命、手を動かしてくれている。


……しあわせ、だなあ。