――………


「はぁ…ッ、はぁ…ッ、はぁ……」

「は…、ひ、ひろくん……?」



何も分からないまま、飛呂くんの手に導かれてしばらくすると。

いつの間にか、知らない家の前にいる。


「…ごめん、ウチに来て雨宿りすんのが一番いいかなって考えて、それで…」


まだ、息を荒くしながらも、飛呂くんは鞄から鍵を取り出して、玄関のドアを開けた。


…と、いうことは。


「…ここ、飛呂くんのお家、なの…?」

「…ッ」


なぜか顔を赤らめる飛呂くんの反応に、ここは確実に飛呂くんの家なんだと気づかされる。

玄関を開けると、確かに飛呂くんと同じ匂いがした。



「とりあえず、タオル持ってくるから…。あがっていいよ」

「え!?い、いいよ、汚れちゃうし、このまま待ってる」

「…そ」


ばたばたと家の中に入っていく飛呂くんを見つめながら、この現実にようやく目を向ける。


…わたし、飛呂くんのお家にいるんだ…。

ていうか、本当にあのお店の近くだったんだな…。


なんか、思ったより、緊張する。


「…ヒヨコ、タオル。使えよ。俺も部活で汚してるやつだから、濡れたところ全部拭け」

「…ありがとう……」



しん…とした、家の中。

きっと、わたしたちしかいない。

外は、更に雨が強くなっていた。