偶然にも、そこにいたのは朔ちゃんで。

天井を見るような形で、わたしはすぐ後ろにいた朔ちゃんに目を向けた。


「あは、何その姿勢、面白いね」

「え、ほんとだ、思わず」


そっか、朔ちゃんのクラスからも、ここの自販機が一番近いんだ。

そうだった。忘れてた。


「朔ちゃんも喉乾いたの?」

「んーん。飲み物持ってくんの忘れたから、朝のうちに買っとこうと思って。あちーしな」

「そっか」


…。

………はっ!!!!!


冷や汗と同時に、隣にいた飛呂くんの方を向く。

完全に朔ちゃんとの会話に集中してた。


「…ご、ごめん」

顔色も表情も変わってないけど、飛呂くんはわたしのほうをジーッと見ていた。


そんなわたしたちに、朔ちゃんもようやく気づいたようで。


「…あー、俺、もしかして邪魔しちゃったりした?」

「…」


ごめんね、と、飛呂くんに困ったような笑顔で話しかける朔ちゃん。

二人が話してるの、なんか…変な感じ。


「いや、ずっと突っ立ってた俺らが悪いし」

「そ、そうだよ朔ちゃん…」


邪魔とかそんな、そんなことないのに。



「じゃーもう行くぞ、ヒヨコ」

「…えっ?!飛呂くん?!」



気づいたときには、グイッと、とても強い力で、右手を引かれていた。

「…っ」


ひ、飛呂くんの、手…。

昨日も握った、飛呂くんの手だ。