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学校に着くと、もう飛呂くんは来ていた。

相変わらず、本を開いてそれに夢中だ。


アニカと高橋くん…は、まだ来ていないみたいだし、話しかけるなら、今がチャンスかなあ。


「…っ」


飛呂くんの姿を見ると、昨日のことが一気に思い出された。

抱きしめられて、好きだって言われた、あの瞬間を。


「ひ、ろくん…っ」


あれが夢だったら、どうしようかって、こわいけど。


「…おお、ヒヨコ。はよ」

「…!」


飛呂くんを目の前にすると、そんなこと、どうでもよくなってしまう。


「あ、あの、おはよう」

「…はよ。って、俺言うの2回目なんだけど」

「あ…はは、そっか、そうだね」


くすぐったい。
鎖骨のあたりが、ざわざわと騒ぐ。


「…ヒヨコ」

「は、はいっ」


声も、裏返って。

わたし、おかしいとこだらけだ。



「…飲み物飲みたい。買うの付き合って」

「…」



飛呂くんは、いつもどおりだ。

すごいなあ。