「これ以上お邪魔しちゃ悪いので、僕はこの辺で」

会長は小さく会釈をして、腰をあげた。

「ああ、桃さん」

会長が思い出したと言うようにあたしを見た。

その“桃さん”と言うのをやめろと言う話である。

さっきまで“平岡さん”呼ばわりだったじゃないの。

「何ですか?」

あきらかに不機嫌な声を出してあたしは聞いた。

「遅れないようにしてくださいね」

ニコッ

会長がデレていると言う笑みを見せて、あたしに言った。

さっきまでフツーに微笑んでいたでしょうが!

何で今、と言うよりもあたしにだけそのデレ笑みを!?